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『人と時』

スペシャルインタビュー

- Part ② -

Special Interview

熊木杏里という音楽、その本当のところ
- Special Interview Part ② -

───高校時代にタレントスクールに通ったり、人前で歌うことが平気だったりと、熊木さんはもともと目立ちたがりな部分がきっとあると思うんですが、現在でも自己アピールは相当に控えめですよね。

そうなんですよね、目立ちたいけどアピールできない。よかったら聴いてください、みたいな(笑)。本当はすごく聴いてもらいたいのに。

───最高の品だとわかっているのに、「つまらないものですが」って言っちゃうような(笑)。

そうそう、そういうところがあるかもしれない(笑)。

───作品をつくるときは、そうではないでしょう?

つくるときは、世界は自分のものだ!ぐらいの気持ちでいます。そのときだけは自信を持って、誰のことも何も気にせずにつくっています。

───熊木さんの音楽も、楽曲の根底にあるテーマや、言葉の行間にある感情はとても強かったり激しかったりするはずなのに、表現されると静かな佇まいになりますよね。

ヘタなんですよね、そこが。

───いえいえ、むしろ逆ですよ。激しい感情を激しいままに、音と言葉で表現するほうが簡単だと思います。

結局、どうやったらいちばん届くかなっていうことだと思うんですよね。感情が高ぶっていることは多々あって、これをどうやって曲に閉じ込めようかと考えるんです。たとえば「飾りのない明日」というアルバム(2016)をつくっていたときは、ずっと半泣きだったんです。そのぐらい高ぶっていることもあって。

───胸を掻きむしらんばかりの感情が、どういう経緯をたどって静謐な世界観を持つんでしょう?

裏側から言葉を探すようなことが、自分では楽しいのかもしれないです。曲をつくるときに、無音だというのも理由のひとつかも。楽器を弾きながらだと、わーっと感情のままのサウンドができそうですけど、その想いを歌詞に閉じ込めるために無音の状態でつくるので、本当の感情が見えないものが多いのかもしれません。

───これは熊木さんの音楽の特徴のひとつだと思うんですが、聴いていると景色が見えてくるのに、歌詞には風景描写がほとんどありません。

あんまり必要ないかなって感じなのかも、そういう描写は。心のほう、心象風景のほうが大事かな。具体的な描写で物語を見せるやり方にも憧れはあるんですけど、はっきり描かないほうが聴く人それぞれが好きな景色の中で聴けるんじゃないかなって思うんですよね。

───確かに、熊木さんの楽曲は、聴くときの心理状態や環境に寄り添ってくれます。何も言い切っていないし、シチュエーションを限定していないから。

言い切るのは好きじゃないんですよね。自分の中では言い切っていることもあるんですけど、そんなに日々、はっきり答えが出ることばかりじゃないですよね。そういうぼんやりしたところの曲があってもいいよなぁって。私もそういう風に音楽を聴いてきましたしね。悲しいとか嬉しいとかじゃないとき、感情が際立っていないときに聴いて馴染むものがいい。日常を切り取るって、そういうことなのかなって思います。自分で歌っているときも、すごく悲しくなったり、ああ幸せだなって感じたりして……自分の曲なのになんだか不思議ですよね(笑)。

───作品になってしまうと、作り手さえもその時々の心持ちで感じ方が左右される、と。

そうなんです。自分が自分の曲にほだされたり、寄りかかったり、慰められたりしてるんだと思うんですよね。なんとなくですけど、こういう曲が世の中にあってほしいと思うもの、自分が好きだと思う音楽を、自分で生み出している気がするんです。こういう音楽が聴きたい、こういう風に聴きたいっていうのを再現してるのかなって。

インタビュアー・斉藤ユカ

<次回:11月28日(木)20:00 公開>

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人と時

  • 【初回生産限定盤】(CD+DVD)
  • ¥6,545+税 YCCW-10369/B
  • 2019.10.30 Release
  • 【通常盤】(CD)
  • ¥2,727+税 YCCW-10370
  • 2019.10.30 Release
≪CD収録内容≫
初回限定盤・通常盤
  • 1. home
  • 2. あわい
  • 3. それがいいかな
  • 4. 傘
  • 5. Best Friend
  • 6. どれくらい?
  • 7. いつかの影法師
  • 8. 亡き歌
  • 9. 風船葛
  • 10. 生きかけとして
  • 11. 雪
≪DVD収録内容≫
初回限定盤
熊木杏里 LIVE “ホントのライブベスト版 15th篇” ~An's Choice~
  • 1. 花信風
  • 2. 時計
  • 3. ちょうちょ
  • 4. 風のひこうき
  • 5. 私が見えますか?
  • 6. 七月の友だち
  • 7. wonder land
  • 8. イマジンが聞こえた
  • 9. 朝日の誓い
  • 10. ゴールネット
  • 11. 誕生日
  • 12. 君の名前
  • 13. 心ごと - U時間 -
  • 14. 窓絵
  • 15. 新しい私になって
  • 16. シグナル
ベースと鍵盤の愛だ 北京・上海 ~An's Choice~
  • ドキュメンタリー
  • 17. 一千一秒
  • 18. 風の記憶
  • 19. Hello Goodbye & Hello
  • 20. 羽
  •  

熊木杏里 LIVE “ホントのライブベスト版 15th篇” ~An's Choice~

  • 【ライブ盤】(CD)
  • ¥2,545+税 YCCW-10371
  • 2019.10.30 Release
≪収録内容≫
  • 1. 花信風
  • 2. 時計
  • 3. ちょうちょ
  • 4. 風のひこうき
  • 5. 私が見えますか?
  • 6. 七月の友だち
  • 7. wonder land
  • 8. イマジンが聞こえた
  • 9. 朝日の誓い
  • 10. ゴールネット
  • 11. 誕生日
  • 12. 君の名前
  • 13. 心ごと - U時間 -
  • 14. 窓絵
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