- 第二部 -
(Page 2/3)
熊:アンケートで「「home」でスッとアルバムの世界に入り込めて」っていう回答がありますね。
森:いいですね。
熊:それはそういう狙いだったからね。
森:そうですね「1曲目が欲しい」っていう話が打ち合わせのときからありましたしね。
春:この曲はキーが「E♭」でっていう指定があって熊木さんに作曲をお願いしたっていう経緯がありましたね。
森:そうそう。
熊:夕焼けキーだっけな。
春:それはなにか理由があったんですか?
森:それぞれのキーに色とか景色を感じるんですよね、自分のなかでね。それがあって、「夕方っぽくて」「ちょっとさびしくって」「温かくって」っていうキーが「E♭」なんですよね。
春:なるほど。
森:それはみんながそう思うかわからないけれど、「E♭」だったら自分が導きたい景色の方にアレンジできるんじゃないかなって思って「E♭」でお願いしたんです。
春:なるほどね。
森:すごい主観が伴うオーダーだったんですけどね。
春:面白いですね、音楽的な理由で「曲の繋ぎで」とかではなくって、全然違う発想から出てきた事にびっくりしました。
熊:「景色」っていうのがキーワードかもしれないね、森田くんの。
森:音楽的にね、「次のキーが何々だから」とかじゃなくね。
熊:そんな感じで「とぼとぼ家に帰る」みたいな曲を書いて。
岡:全曲景色がみえてくるよね。
熊:そうね。
森:景色はやっぱ一番見えたいじゃないですか、わからないけど(笑)
熊:これでも歌詞は結構苦戦したんだよね。
森:それは、先にテーマがあったからですか?
熊:うんそう。あと、すごくこのメロディーがもう物語ってるんだよね。
森:はいはいはい。
熊:それでちょっとピアノでこんな感じでっていうのがあって、その間に私がメロディを乗せてみたいな。
森:なんかピンポンみたいな作業やりましたよね。
熊:はい!はい!やぁ!やぁ!ってなって。
森:デモ送って、歌入れて、ピアノ入れてって。
熊:そしたらもうそのメロディがもう語っていて、結構それにはまって、「もっと泣ける」とか、「もっと泣かしてやろう」みたいな歌詞の方に出来たような気もして...。そうしていくと、なんか逆に薄まっていくっていうのがあって、それはもう良いかなって区切りを付けました。
森:牧歌的な感じでね。
春:なるほどね。
森:これ、一番最後までアレンジしてましたね、スタジオでもアレンジしてた。
熊:ね。
森:ギターをアコギにするかガットギターにするかって。
熊:明る過ぎるねってなったり。
森:結局最後にガットギターに差し替えて弾いたのを覚えている。だからこれがアレンジ的に最後に出来た曲だね。
熊:これはギターもピアノも、森田くんが全部弾いてますね。
森:そうですね、全部やってますね。
熊:これはなんで純ちゃん(ギター:齋藤純一)じゃなかったんだろう。
森:なんでしょうね、人にお願いしたいときって、その人の音とかその人の音楽感が必要なときだから、自分の中で音のイメージがあって、自分でその音のイメージが出せていたら、人に頼まなくっていいかなって。逆にその人の個性ではなくって、自分の方に寄ってもらわないといけない事になるから。せっかく個性的な人達が集まってるのにもったいないなって思って、自分の中でイメージがあるんだったらいいやって。
熊:オレがやるって。
岡:統一感がやっぱあるもんね、その人が持ってる同じタイム感があるから。
森:うんうんうん。それはあるかもしれない、ピアノもほとんど直してないからね。
熊:それがなんか良かったよね。森田空気感がね(笑)
森:「森田空気感」。
熊:このボーカルは、マイクはなにで録ったんだっけ?
岡:47(Neumann U47 Tube)タイプ(Wunder Audio CM7-GT/M7)かな、真空管タイプですね。
森:あとHA(ヘッドアンプ)はNeveクローン(WARM AUDIO WA-73EQ)ですね。
熊:クローン!
森:マイクは真空管だけど、マイクプリアンプ(HA)はトランジスタ。
熊:トランジスタ...。
森:そのマイクとHAの組み合わせっていうのはどういう風に考えてますか?
熊:ひひひ、いい質問や。
岡:ま、ん、プリ(HA)よりも...。
森:あ、緊張してるでしょ(笑)
岡:うん(笑)プリよりかは、マイクの方が大事かな。
森:今回やっていて思ったのは、プリが担う部分って、言葉尻とか、声の最後の着地というか、 足下の部分なんだなっていう。マイクはわりと言葉の頭の部分で、その言葉をどう着地させるかっていうのがプリで決まるのかな?って。
熊:うん。
森:例えば言葉尻をトラックになじませたい感じだったら、真空管にすると言葉尻が溶けるみたいな。
岡:今回、溶け方が結構キモだったかな、にじみ方っていうか。
熊:「溶け方」「にじみ方」「キモ」確かに!いくつか試したもんね。
森:何回かやりましたね。
岡:前に出過ぎちゃうとアコースティックの世界から顔出過ぎちゃう。
熊:浮いちゃう。
岡:ちゃんと額の中に入っていて欲しいというか。
熊:うんうん。なんかこの曲だけ違う質感でもいいみたいな事言ってたよね。
森:ちょっとドリーミーな。
岡:いくつか試したんでしたっけ?
熊:結果一緒?
岡:うん。
森:うん、47とNeve...。結構この組み合わせは多かったですね。なんか結果47が良かったんですよね。状態も良くて、いわゆる普通の47みたいに潰れすぎないというか、溶けすぎないっていう。
岡:ヴィンデージの方のね。
森:そうそう、ちょっとハイファイ(高音質)だったから、ちょっとシャキッとしたところもあってね。
熊:これ歌は何回くらい録ったっけ?
森:「home」はすごい少なかったはず。
岡:これ、一発か二発だったかな。
熊:そうだよね、組み合わさってない様な気がする。
森:うん、流れよし子ちゃん。しかもなんかの録音の間に録るくらいの感じだった。
熊:ギター録ってね。
森:そのついでに「歌もやってみよう!」みたいな。それで「出来た」みたいな。宅録みたいなタイム感でね。
熊:それが良かったね。「満を持して」「うん!」みたいな感じじゃなくってね。
岡:昔テープレコーダーのレコーディングをしてたときに、ホームスタジオみたいな感じで、思いついたときに「ちょっとやってみようか」ってやれるのってすごいうらやましかった。
熊:いいよね。
森・春:うんうんうん。
熊:じゃあいまそれが。
岡:時代的にも簡単にできるようになった。
森:そうですよね、いまね。すぐ録って、重ねるだけ重ねて、ミックスのときに全カットするっていう(笑)
熊:島田さん(プロデューサー:島田昌典)スタイル。
森:島田さんスタイル。「いらない、いらない」っていって(笑)そういうのも出来ますもんね、いま。
熊:このメロディの後ろのなんだっけ、「ぴー」ってやつ。
森:ピアニカね。
熊:いいよね。
森:これ、熊木さんにもらったものですよ(笑)
熊:なぞに2台持ってたんですよね。
森:HAMMONDのですね。「家からもう一台出てきたんだよね」って言って(笑)
熊:無くしたと思って買ってもらったらあったんだよね(笑)
森:けっこう良いやつですよね。
岡:いい音してる。
森:これ全部家でサンプラーに録音して、それを再生しているんですよね。切ったりはったりして。
岡:懐かしい作業やな。
熊:それはどういう意味があるの?
森:生でやっても良いんですけど、生でやると...。
熊:強いの?
森:メロディになってしまうんですよね、やってると。この曲に関してはメロはピアノの「ティントン」っていうのと歌だけが前にくると良いかなって思って。
熊:後ろの方でね。
森:風景にするんだったら、1回サンプラーに入れて音質落として、あとは無限再生して、必要なところだけ切るみたいな。
春:なんかメロトロン(鍵盤楽器)みたいですね。
森:あーそうですね、メロトロンをやってるみたいな感じですね。
岡:やり口は同じですね。
森:それが鍵盤から出たらメロトロンだ。
熊:「ラストの「雪」と1曲目の「home」が繋がっているので、エンドレス感があります。「home」と「雪」の関係性を教えてください」って回答きてますけど、そういう人結構いたね。
森:おお。
岡:これはもうループで聴いたときに、すごい繋がり良くって気持ちよかった。
森:これはね、我々の作戦通りですね(笑)
熊:ね!
森:そのエンドレス感は出したかった。何回でも聴けるみたいなね。
熊:「「home」で入って「雪」で静かに終わって、それがひとつの物語、人生の縮図の様に」って。
森:「人生の縮図...」「人生の縮図!ぱんぱんぱんぱん(机を叩く)」。
熊:(爆笑)
森:人生の縮図ね...。ストーリー性が高まるというか、映画みたいな。最初の雑踏は入れたかったんですよね。
岡:アルバムの冒頭20秒ずっとSEっていうね(笑)
熊:雑踏(笑)
一同:(笑)
森:雑踏の音からはじまる(笑)
熊:要さん(スターダスト☆レビュー:根本要)のラジオの窪田さん(パーソナリティー:窪田有美)が言ってた(笑)「最初聞こえないなって思って、よく聞いたら雑踏の音が入ってる」って(笑)気づいてくれてありがとうございますって(笑)
蘭:言ってましたね(笑)
岡:1周したときのその20秒がすごいいいのよ。
森:うんうん2周目ね。
熊:そう、いいんだよね。なんか、いいんだよ。
岡:フラッシュバックっていうか、また見えてくるっていうか。
春:うんうんうん。
熊:雪って外の景色なんだけれど、この曲は一応家の中の歌なんだけれど、1回ちょっと外に抜けていく空気で。また、ふっと「home」で外から家に帰ってくるっていう感じだよね。
森:この雑踏の音は新宿駅まで録りにいったんですよ。小滝橋通りの方に出る出口の方で。夕方くらいに。iPhoneですよ、iPhoneのボイスメモで。かざしてね。
熊:「イントロが長いものが多いなと思った」っていうのがあったんだけれど、私はそれが良いと思ったんだよな。なんか急いて生きていく事が多いから。ほんのちょっとの時間はそんなに長くないでしょって思うんだよね。
森:場面転換っていうか、ビートルズみたいにイントロ1小節とかイントロなしとかで「ガー」って展開していくのも好きだけれど。
熊:まあそういうのはそういうのだよね。
森:今回は割とアルバムのテーマみたいなのもあったからね。でも「home」好きっていう人多いですよね。
熊:多い多い。ラジオでかけたときすごい良い反応だもん。
春:へー。
熊:「「home」聴いて買います!」って言ってた人が3人くらいいたなぁ。
岡:すごい、3人も!
熊:メールがきてました。
森:多分試聴機で1曲目聴いて買う人もたぶん絶対いましたよ。
熊:意外と3曲目に「それがいいかな」がきたときに「いいな」って言う人もいて。
森:うんうん。
熊:って話が飛ぶんだなこれ。
森:飛ぶんだな。
一同:(笑)
岡:最近のポップス聴いてて、ちょっと詰まってるから「しんどいな」って感じてる人も、すごい空気感を聴けるっていうか。
森:うんうん。気がついたらすごい耳が疲れてるようなときあるじゃないですか、音が固まりでくるからね。音圧出そうとするとどうしても固まっちゃうから。
春:「home」を再生するとリセットされる感じがありますよね。
岡・森:なるほど。
熊:なんか不思議な気持ちになりますよね。
岡:ミックスでちょっと音圧入れたら、怒られるっていうね。
一同:(爆笑)
岡:「なんかだめだ、ラフミックスの方が良かったですね」って(笑)
春:ありましたねー(笑)
熊:すごい厳しかったよねなんか(笑)圧に対しての厳しさ(笑)
岡:やっぱあかんかったかなって(笑)
春:ちょっと入れすぎたみたいな(笑)
岡:やっぱ空気は残さなあかんかったかって...。
森:失礼致しました、その節は...。
岡:いやいや、それで目が覚めて、「そうだ、これは卓ミックス(豊かなダイナミックレンジがあるミックス)や」って。
森:なるほどね(笑)
熊:「home」からミックスですか?
岡:第1弾のミックスを聴いてもらったときですね。
熊:だから最初はそうやって空気をつかんでったって事ですね。「違うんだやっぱり」って(笑)
森:それが言える仲と言えない仲ってあるじゃないですか...。
岡:言うてもガチガチじゃないからね。
森:「もうちょっとこう、空気感が」とかいろいろ言わなくていい感じがね。「ラフのが良いって」言えば伝わるっていうね。
春:岡本さん的にはね「とはいえちょっと音圧入れといた方が...」っていうのがね(笑)
岡:そう、その「とはいえ」がね、多分ね正直じゃないところやねん本当はね。
森:わかりますわかります、ちょっと足しとこうかなって。
岡:だいだい言われるんですよね、「もうちょっと派手にならないっすか?」って。
熊:あー、まあそうですよね。
岡:まあ、派手にしようがないんですけど。
一同:(笑)
岡:「ぐしゃー」ってならない方が自然でいいんですよね。
熊:厳しかったもんね、なんか今回。その音のあり方がね。見てて思いました。
森:いやー、なんか、ね...。
熊:「オレはこう思ってここに積んだのに、なんか違う!」って(笑)すごいなって(笑)
森:頑固。
春・蘭:(笑)
熊:一徹!
森:いやー、なんかどうしてもあるんでしょうね、こだわりが(笑)
岡:それはある程度やりとりをしないと分からないから、いいんですよ。
森:もっと「ここをこう」みたいなね。でも、今回そんなに多くなかった気がしますね。
岡:うん、別にそんなに。自分でも迷っている感じがあったから。「とはいえ、ちょっと入れておいた方がいいんちゃうかな」って思ったら...。
森:ちょっとスケベ心で足した音圧がね。
岡:やっぱり...。
熊:「ピシャ」っとね。
岡:やっぱり自分に嘘をついてたなって(笑)
一同:(笑)
春:見透かされたみたいな(笑)
岡:マスタリングに委ねようとね。
森:結果、良い質感ですよ。
熊:良い空気流れてる。
森:温かさと寂しさが良い感じに共存してて...。好きだなぁ。
熊:寂しいよね、ちょっとね。「深い悲しみを感じました」っていう人いましたね。それは君の心なのではと...。
森:それだけいろんな事を想像出来るゆとりがあるっていうのは、良いことじゃないですか。
岡:うん。
森:音楽って作り手と聴き手の共鳴だから。
熊:ね。
森:こっちが音圧で圧倒したり、「こうなんです」ってするんじゃなくて。
熊:なんかそれはそれでいいよね。
森:うん。「深い悲しみを感じた」。いいね...。
熊:「ちょっと暗い」(回答より)(笑)
一同:(笑)
熊:そりゃそうですよって。
森:「ちょっと暗い」ね。("A little" ね...。)
熊:じゃあ、次「あわい」いきますかね。
熊:「あわい」はいろいろやったよね、ピアノもね。
森:ピアノをね、そう。歌を録った後にピアノを弾き直しましたね。
春:そうでしたね。
熊:「あわい」からやったんでしたっけ弦の録音?
森:「あわい」からだったかなぁ。
岡:だったような気がする。
森:「あわい」の事をアンケートで探そうとしたら。「「あわい」はシングルバージョンの方がダントツで伝わる。」って(笑)
一同:(笑)
森:「CDよりライブで先に聴いてしまったからかもしれません」。
熊:「あわい」は第... 4位だ。これは歌入れすごい楽しかった気がするな。
春:ふーん。
熊:「あわい」から歌ったっけ?
森:どうだったかな?
熊:わりと早い段階で... 「あわい」からだよ!
森:「あわい」からか...。1番がファーストテイクだったのは覚えてるな。
熊:そうそう。
岡:うんうん。
蘭:「「あわい」好きです」ってありますね。
森:よし、君に決定!
春:よし!
蘭:「別の曲のように断然しみました」と。
森:君に決定!!
熊:「ストリングと熊木さんの歌い方も」っていうのがあるね。
森:「ストリング」と「熊木さんの歌い方も」って言うのがいいですね。なんか、両方の歌心を察してくれているというか。
熊:うんうん。
春:これはマイクは...。
森:これもあれですよ、47の73の76(コンプレッサー(音圧感を調整する装置):Warm Audio WA76)で叩く。みたいな。
岡:バグースセットですよ。
熊:ば、ばぐぅーすせっと(笑)
森:「home」と一緒ですよ。
春:コンプもセットでね。
岡:一緒ですね。
森:良い意味でだから歌も繋がってるんでしょうね。
春:質感がね。
熊:これはでも歌い方がだいぶ変わったなって思う。置いていくっていうか。
森:この曲はキー変えましたね。
熊:そうそう。
春:あー、そうでしたね。
熊:サゲタンダヨネ。
森:温かみがね...。
岡:(ナクナクナーイみたいな)
蘭:(笑)
森:キーがね。
熊:「D」ね。
森:なんかこう... ナクナクナーイってすごいひさしぶりに聞いた(笑)
一同:(笑)
熊:らんちこが密かにウケてた(笑)
森:ナクナクナーイ。
蘭:ナクナクナクナーイ。
熊:奥華子さんが密かに気がついてて、「これキー変えたよね?」って。
森:おー!
熊:「流石っすね!」って。もともとのキーの「E」でデモを送ったんですよね。録り直してやりたいって、家で歌ってみたら。高かったんだっけ?
森:いやなんか、やってて...。最後のサビで上がるっていう。転調っていうのをあんまり普段やらないんですけど、やってみたい気持ちになって。
熊:転調がほかに無いからね。
森:でもそれが、「E♭」から「E」だと明るすぎるからって思って。逆に前を下げたらどうなんだろうって思ったら、その方がこう、寄り添ってうたう様な感じになるんじゃないかなって。
熊:「D」得意キーだからね。
森:そうですよね。
岡:得意キー。
熊:「D」のキー多いんですよね。
森:ていうのもあって、春日さんにも「キー下げるってありなんですかね?」って電話で聞いて。
春:うんうん、突然電話がきて、第一声が「キー下げるってありですか?」って(笑)
熊:「なんの話ですか?」みたいな(笑)
蘭:(笑)
熊:「D」でちょっとピアノだけで歌ってみたら良かったんだよね。
森:うんうん。
熊:「あ、これ落ち着くわ」って。
森:先にピアノトラックを「D」に変えたのを送って、それで寝て。
熊:寝た(笑)
森:朝送って寝て、昼過ぎに起きたら歌が入ったのが届いてて(笑)聴いて、「あー、よしよし」って思ってアレンジをしたのを覚えてますね。
熊:「「あわい」が当時タイアップで発表していたものよりも大きくアレンジが変わっていますが。一度完成した曲の雰囲気を変えることは個人的には難しいように思うのですが。熊木さんはいかがでしたか?」。
森:いかがでしたか?
熊:まずなんの抵抗もない段階で、リアレンジをお願いしたいなって思っていました。アルバムに入れるときはね、したいなって。より自分が作ったときの「あわい」の... 部分?が、発展している感じがあるかなと。あれは”アニメ”って感じだったから。
春:うんうん、あれはね、アニメに寄り添った形の仕上がりにってね。
熊:これはもう普遍的に聴いてもらう「あわい」だと思うんだよね。
森:2パターンあっていいですね、選べる。
春:好きな「あわい」を。
森:「今日はこっち!」みたいな。
春:「朝はこっち!」とかね。
森:「夜はこっち」みたいな。
熊:アレンジよかったね。これはライブでもやったけれどね。
森:良い感じでしたね。
熊:最後いいよね、転調も。
森:弦が生でやってくれますしね。
岡:生弦めちゃくちゃいいっすね。
森:生弦良かったですね。今回、レコーディングしてて思いましたね、「やっぱり弦っていいな」って。
春:ひとりで弦が立ってる感じがまた良いんですよね。
森:それぞれがね。
春:こう、存在感を出してね。
森:アレンジしてるときに、高校の部活感じゃないけれど、それぞれが楽器もって集まってやってる感が出るといいなって思って。
春:ふーん。
森:だからそれぞれが主役になる瞬間があって、メロっぽくて、歌に「ぐわー」って寄ってくるときもあるし、下と上に分かれて「わー」ってやるときもあったり。いろんなバリエーションじゃないけれど、「今はこの人が出てくる」とか「出てこない」とか、そういうのを付けたいなって思いながらアレンジしてたな... 昼間...。
春:昼間...。
森:放課後の教室感を出したかった。
春:その感じありますよね、すごく良いです。
熊:この3声っていうのが良いんですよね、チェロと。
森:うんうん。
岡:学校感...。
熊:ライブのときもすごい思ったけれど。
森:チェロとコンバスっていうのがまた良いんですよね。
春:うんうん。
熊:ヴァイオリンってやっぱり耳を持ってかれがちだから。それを良い感じにチェロとコントラバスが下に持ってってくれてるから。ヴァイオリンだけが目立っていかない様な感じがね。
森:うんうん、混ざってなんぼですからね、弦って。
岡:一番最初が弦の録りやったから。
森:そうですよね。
熊:緊張感ありましたよね、ちょっとね。
森:普通最後ですからね。
岡:すごい焦った(笑)
熊:「あっぷあっぷした」みたいな。
岡:「大丈夫かな」って(笑)
春:なにより先に弦録りましたもんね(笑)
熊:しかも、はじめましてのメンバーでね。
森:いやなんかこう、スケジュール的にそうなったんですよね...。
岡:そうそうそう。
森:いやでも僕の中では全然大丈夫って勝手に思ってて。アレンジも終わってるし、これが生に差し替わるだけだから。これくらいの音の感じで録ればこんな感じになるかなって、思ってたから。確かに珍しいスケジューリングだなとは思ったんですけど(笑)なんか、大丈夫だろうって思ったんですよね。
春:僕も多分普段だったら、いろいろ言っていたと思うんですよね。「スケジュール大丈夫?」って(笑)なんか今回は「大丈夫でしょ」って思ってましたね(笑)
森:多分、みんなそんな事を思いながらも「なんかいけるかもしれない」って思っていたんでしょうね(笑)
熊:「全体的にシンプルな音作りになっていますが、ライブでの再現性を意識されていたのでしょうか?」。
森:どうなんですか?
熊:されていたんじゃないですかね。
森:ライブにも持っていけるものにしたいなとは思っていたけれど、ライブも完全再現では無いって言ってしまうとあれですけど。
熊:でもレコーディングはライブメンバーがほとんどだからっていう意味では、私の中ではちょっとあったけどね。
森:あ、じゃあ... アリマシタ。
熊:完全再現じゃなくても「全然違うじゃん」っていう風にはならないというか。
岡:イメージは同じですよね、アルバムの世界感がちゃんとね。
森:それはありますね。
熊:そうそう。ライブで「いつかの影法師」にまるちゃん(ドラム:岩丸正)が入ったとしても、それは再現っていう中の一部っていうか、それくらいの範囲っていう。それはあるなって思っていたけどね。
森:再現性ね...。
岡:意識は別にしてなかった...。
熊:なかったらしい(笑)
森:な、な、なかったっていうか、同期は使いたくないから、基本的にね。
春:基本的にね(笑)
熊:そうね、そういった意味ではね、みんなでやれるよと。
森:今回音数少ないっていう感想多いですよね。
春:うんうん。
熊:「この雰囲気を続けて欲しい」って。嬉しくない?これ。
森:いいですね。今回のアルバムは、こんな感じだったんでしょうね、出来上がった曲達がね。
春:うんうん。
森:そんなにこう、いっぱい詰め込まずともちゃんと世界感が作れる曲達というか、そういうアルバムにしたかったっていうのもあるんですけど、17年続けてきた結果、いまのその熊木さんのリアル感を出したかったから、なんか自然とこう、不必要なものははずれていったっていう。その代わり、いっこいっこの音はめちゃこだわるみたいなね。
岡:変な上塗りは無いですよね。きれいな水彩画。
森:おー。
春:画伯!
熊:そうだねー、きれいだよね。
岡:ゴッホみたいに、すんごい盛りあがってないみたいな(笑)
森:べたべたじゃないね(笑)
岡:「じゃあここでパッド入れます」とかね。
森:いやね、そうしたら明るくなるのはわかるんですけどね...。このレコーディング終わったあとに作ってたアレンジなんか、72トラックあったからね、1曲で(笑)
岡:ループ1、ループ2、ループ3みたいな。
森:この1曲で『人と時』全トラック数より多いんじゃないかって思うくらい(笑)
岡:ドラムの種類だけでも、キック1、キック2みたいな。
春:最近ざらに100トラック超えてくるものがありますもんね(笑)
森:超えますよね。EDMとかね、ああいう感じのをやろうとすると、「こんなに使うんだな」って思って。
岡:使うよね。
森:びっくりするくらい『人と時』のデモ作ってたときとは違うっていうか。マウスのスクロールの量が全然違うみたいな。下まで下まで下まで下までって(笑)
春:カリカリカリカリカリって(笑)
岡:トラックの波形表示がミディアムのサイズで大丈夫やもんね。
森:大きいままで大丈夫っていう(笑)
岡:ミニとかマイクロにしなくていいみたいな(笑)
森:音数って、わからないですけど、多くても良いっていう訳じゃ無いし、少なくても良いっていう訳じゃ無いと思うから。その曲とか、その人が歌っている感じに合えば良いかなって思うんですよね。
熊:よし!次!
岡:よし!
熊:なんでしたっけ次?「それがいいかな」?
春:「それがいいかな」。
(Page 2/9)